とあるエッセイより見る 今上陛下のお人柄

前の記事をチャットGPTさんに評価してもらったところ、「感情的」など散々でしたので、今回は楽しく、今上陛下の人柄や育った環境が垣間見えるエピソードが書かれた本を一冊ご紹介したいと思います。


原田宗典さんエッセイから垣間見えた今上陛下

物書き・原田宗典さん

皆さんは、作家の原田宗典さんをご存じでしょうか?
元はコピーライターの方で、小説や、エッセイ集を数多く出版されています。
私が若いころ、雑誌「ダヴィンチ」が創刊されました。
特に創刊当時は書籍の紹介や書評が中心で、原田宗典さんはよく取り上げられており、私の大好きな作家さんの一人です。

原田宗典さんのエッセイはすごく軽快。
ご自身の失敗談やご加速や友人との思い出が中心で、特に少年時代のエピソードは、いかにも小学生男子らしさにあふれ、読むと楽しい気分になりますよ。

『家族それはヘンテコなもの』


原田さんのエッセイ集の一冊、『家族それはヘンテコなもの』(角川文庫)「皇太子ご成婚の話題」に、今上陛下のエピソードは出てきます。

以下、エッセイの内容です。

以下、著作を抜粋したものは引用枠で、ホチキス止めの枠は、秋津による内容説明です。



皇太子(浩宮さま)のお妃として小和田雅子さんが内定したという、とてもおめでたく明るいニュースで世間が歓喜に沸いた頃、原田さんもご夫婦も多分に漏れずその話題で持ちきりであったとのこと。
そして、原田さんは、子供のころの浩宮さまとの出来事を奥様に語るのです。


ボートごっつんこ


時は原田さんが小学一年か二年(原田さんは今上陛下より一歳年上)
場所は家族で出かけた夏の軽井沢。
冬はスケートリンクになる池で、父親と手漕ぎボートに乗る原田少年。
最初は父親が漕いでいたものの、オールを渡された少年は、父親にいいところを見せようと張り切って漕いでしまうのです。
そして衝撃を感じてボートは止まってしまう

以下、引用します。

振り返ってみると、別のボートがすぐそばで激しく揺れている。どうやら衝突してしまったらしい。
そのボートにはぼくと同い年くらいの子供と、白髪の老人が乗っていて、老人の方は衝突の衝撃に驚いて中腰になり、「あららら・・・・・」などと言いながら必死で体制を整えようとしていた。
子供の方はオールを持ったまま、静かな落ち着いた表情で老人の様子を見上げている。
一方ぼくの父親は、どういうわけかハニワ顔をして二人の様子を見ていた。
やがてボートの揺れがおさまったころ、白髪の老人はぼくらに向かって頭を下げ、「どうも申し訳ございません」と丁寧に謝ってきた。
「ここここここちらこそ、すみません」父親も謝り返した。
それに対し、オールを持っていた子供もちょこんと頭を下げて挨拶をしてきた。

『家族それはヘンテコなもの』原田宗典・著 角川文庫より

ボートは分かれ、距離ができてそこでお父様は我に返り、相手が誰かもわからなかった小学生の原田さんに「あれは浩宮さまだぞ」と連呼するというお話。


白髪がトレードマークであった侍従であった濱尾実さんは、このエピソード当時は40代のまだ黒髪の頃でしたから、別のお付きの方でしょうか。

そして、まだ6歳ぐらいの今上陛下の素晴らしいこと。
その年頃の男子なら「向こうがぶつかってきたんだよ!」ぐらいは言ってもおかしくない場面ですが、お付きの方と同じように頭を下げるなんて素晴らしい。
ぶつかった時も動揺することなく、落ち着いてお付きの方を見ているという。
濱尾さんが陛下の教育係として、横断歩道を渡るときには皆で手を挙げたり、きちんと挨拶ができるまでやり直しさせたり、陛下のお手本となり、いわゆるお行儀について厳しく育てられたエピソードは知られていますよね。

今上陛下の立ち居振る舞いはとても美しいですが、実は子供のころから身につけられたものなんですよね。

教育って大事、身近にいてお手本となる人がいるって、すごくありがたいこと。
そう感じます。
もしもこの時、『なんと無礼な。こちらの方が誰なのかわかっているのですか?』なんてお付きの方が言っていたら…と想像してしまいますが、ボートをぶつけられても頭を下げるような方々で支えられてきた今上陛下なんだなと感じます。


「ヒロミヤさん」として愚痴られてしまう

この『『家族それはヘンテコなもの』(角川文庫)「皇太子ご成婚の話題」には、もう一つ今上陛下にまつわるお話が出てきます。
以下、内容。


引用します。

「ご主人はご在宅でしょうか」
「主人?主人は会社ですけど、平日の昼間ですからねぇ!」
「あ、左様ですか。実はテニスをご一緒になさらないかなと思いまして…」
「テニス!またテニスなのォ!ったく、しょうがないわねえ」
「本日は何時ごろご帰宅でしょうか?」
「さあねぇ。いつもテキトーなんですよ本当に。ウチの馬鹿は」
「では機会を改めまして、お電話差し上げます」
「あら、こっちからかけさせますよ。番号何番です?」
「いえ……それはちょっと」
「じゃ、電話があったことだけ伝えますね。どちら様?」
「はい。浩宮と申します」
「はいはい、ヒロミヤさんね。わかりましたあ!ガチャ」

原田さんの友人の友人であるA君の奥様は、テニスに誘う旦那様の友人と思い込んで、上記のようなつれない電話対応をしてしまうエピソード。
帰宅したご主人に、ヒロミヤとかいう友達から電話があったことを伝えると、A君も誰のことかわからない状態。
テニスの誘いであったことを伝えると、A君も気づくのです。

ヒロミヤさんではなく、浩宮さま ということに。

このA君、実は英国滞在時に、同じく英国留学中の浩宮さまと偶然テニスコートで出会っており、二ゲームほどテニスのお相手をしたようで。

以下引用

A君はアガッてしまって、全然試合にならなかったらしいが、」浩宮様は厭な顔一つせず、別れ際には、「とても楽しかったです。また日本でプレイしたいですね」と優しい言葉までかけてくれたそうだ。
A君はいたく感激し、
「ええ、ぜひ」などと答えてその場は別れた。


とは言っても、お立場を考えれば、浩宮さまから本当にお誘いされるとは思ってもみませんよね。
ですが、そこは誠実な浩宮さま。
本当にテニスにお誘いの電話をかけられたのでしょう。
そして、上に引用したような電話対応をされても、いやな顔一つしてないであろうお姿が目に浮かびます。

庶民の、飾らない対応に、驚かれはしたかもしれませんが。
お休みのたびに、A君はテニスに出かけてしまうのでしょうか。
趣味にばかり熱中されると、奥様としては寂しいですよね。
そんなお誘いをしてくるご主人の友人には、奥様がチクリと言いたい気持ちはわかります。
まさか、そのお相手が浩宮さまとは微塵も思わずに。

しかし、、A君、それ以上にA君の奥様がてんやわんや、なんてこと言っちゃったんだろう、私ガチャ切りしちゃったじゃない!と焦る様子が目に浮かぶ…


以上、原田宗典さんのエッセイから垣間見ることができる、今上陛下のエピソードでした。

原田さんのエッセイはどれも楽しいので、是非、お読みいただけると嬉しいです。

以上、『家族それはヘンテコなもの』原田宗典・著(角川文庫)を抜粋したものは引用枠で、
ホチキス止めの枠は、秋津による内容説明です。



テニスと言えば、浩宮さまですよね!

報道機関から流れてくる皇族方の言動とはまた違い、国民の皆さんから出てくる、こういったエピソードってほっこりします。
私が知らないだけで、こういったほっこりエピソードってたくさんあるんだろうなと思います。

今上陛下の圧倒的な穏やかなお人柄が、とにかく素敵です。


もっと知りたいですよね。
以前は、日本の報道ももう少し自由でしたよね…
今の日本の報道・通訳なしでエピソードではなく…

小ネタ・著者の「園遊会に平服」エピソード

さて、ここで、今上陛下のほっこりエピソードをエッセイにしてくださった、原田さんのエピソードを紹介します。

原田宗典さんのwikipediaを見ると、現在(24/08/20)こんなことが書かれています。

すばる文学賞に佳作入選した後、園遊会に招待されるも、コットンパンツにアロハシャツ、サングラスという出で立ちで出席してしまい(「平服」の意味を勘違いしていたため)、終始芸能人と勘違いされたままであった。

原田さんが園遊会に招待された時のお話は、

『元祖 スバラ式世界』原田宗典 集英社文庫 「園遊会で原田玉砕」

にて書かれています。

ウィキペディアだけを見てしまうと、驚かれる方もいらっしゃるでしょうね。
あの園遊会に、そんな出で立ちで?!と。


エッセイを読んでいただけるとわかるのですが、
「天皇皇后両陛下主催、赤坂御苑での園遊会」ではなく、
中曽根康弘元総理が総理官邸の中庭で催した園遊会、お茶会?桜をほにゃらら?のお話です。

こちらのエッセイを初めて読んだときは、私も若かったので、実は園遊会の違いが判りませんでした。
あの赤坂御苑に、皇族方の御前にアロハシャツで…と勘違いされてしまう方もいるかもしれません。

ウィキペディアの、こういうちょっとした説明不足も怖いですよね。
「園遊会」のリンクに飛ぶと、天皇皇后両陛下主催のページに飛びますし。

もちろん原田さんのエッセイには、正確に、総理主催のものであることは書かれていますので、誤解なきよう。
芸能人のふりをしてこそこそやり過ごす、そんな情景が目に浮かぶようで、すごく楽しいエッセイです。

原田さんのエッセイは、情景や心情描写が巧くて感情移入しやすく軽快ですが、小説はシリアスで、私は『十九、二十歳』が好きです。
私は、自分の病気がわかった時から、さらなる親近感を勝手に持っています。

それでは今日はこの辺で。ではまた。

秋津まなこ